研究概要 |
本研究では,形状記憶合金細線を用いた2次元/3次元編組体により,衝撃荷重を柔らかく受け止め,さらに,状況に応じて力学特性を変化させる適応能力を有する知的緩衝構造の実現を目指す.本年度は,基礎検討として,(1)形状記憶合金細線の引張変形による衝撃吸収特性の評価実験;(2)速度依存プライザッハモデルによる高ひずみ速度域における超弾性特性のモデル化;(3)形状記憶合金編組体シェルの製作と静的復元力特性の測定実験,を中心に研究を行った. 1.超弾性形状記憶合金線の引張衝撃応答を計測する実験装置を製作し,最大30/sのひずみ速度に相当する初期速度を与えた際の応力ひずみ応答を計測し,物理モデル(Muller-Achenbach-Seeleckeモデル)を用いた計算結果との定性的な比較を行った.超弾性形状記憶合金を緩衝に用いる場合,初回載荷時のソフトニング特性,最大回復ひずみ量およびエネルギ吸収特性が性能を左右するが,実験の結果,高ひずみ速度においてもソフトニング特性および最大回復ひずみ量には顕著な劣化は見られず,超弾性形状記憶合金の緩衝材料としての有望性を支持する結果となった.ただし高速度域における変位と復元力の測定精度に課題を残した. 2.2本の円弧状の細線からなる超弾性形状記憶合金バネの低速度域における変位復元力特性をプライザッハモデルでモデル化した.非負制約条件を付加した最小自乗法によってプライザッハ分布関数を同定することを提案し,特定の変形履歴パターンに依存することなく精度よく同定を行えることを示した.さらに,プライザッハモデルを拡張して,高ひずみ速度域においても適用可能な速度依存プライザッハモデルを提案し,その同定手法を開発した 3.形状記憶合金線を編み合わせたシェル状編組体(円筒,球面,およびトーラス型)を製作し,静的な変形-復元力特性を実験的に調査した.
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