研究概要 |
本研究では,形状記憶合金線を用いた編組体により衝撃荷重を受け止め,緩衝後,自律的に原型状復帰を行うことのできる知的緩衝構造の実現を目指したものである.本年度の成果は以下の通りである. 1準静的領域および高ひずみ速度領域での応力誘起変態の局在性に関する実験を行った.高速ビデオカメラおよびサーモグラフィによって超弾性形状記憶合金ワイヤにおける相界面の伝播を観察し,ひずみ速度と相界面の空間分布の局在性の関係,トレーニングの有無による差異について検討した.未トレーニングの試験片では応力誘起変態の核形成は局所的であり,変態の起点となる核は変態終了までにたかだか数カ所であるに対し,荷重サイクルを繰り返すにつれて形成される核の密度は増加し,トレーニング終了後では変態は見かけ上均一に進行した.以上の傾向は衝撃試験(〜50/s程度のひずみ速度)においても同様であった.以上の知見より,トレーニングされた実用材料の場合,高速引張変形のモデル化において変態の局在性を考慮する必要はないと結論づけられた. 2超弾性形状記憶合金の衝撃引張試験を行い,変態応力がひずみ速度の対数に比例して上昇することを確認した.BrinsonモデルとIkedaモデルのそれぞれに変態応力のひずみ速度依存性を取り入れた拡張モデルを構築し,実験結果と比較した.特にlkedaモデルにおいて,実験との良好な一致を示した. 3Ikedaモデルに基づく拡張モデルを汎用有限要素法コードに組み込み,衝撃応答解析が可能な超弾性形状記憶合金線および編組体の大変形解析プログラムを開発した.1軸引張,4点曲げ,1軸圧縮バネ,および編組体シェル構造について解析を実施し,実験結果との比較検証を行ったところ,単純なモデルにおいてはよい一致を得ることができた.しかし,超弾性形状記憶合金の引張変形と圧縮変形の非対称性のモデル化に課題を残した.
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