研究概要 |
本研究では急傾斜移動作業ロボットとして,2本の長いワイヤをV字に掛けてこれを引張りながら移動するロボットを提案している.このようなロボットは急傾斜では壁面に対して力を加えるとワイヤにぶら下がった自機は壁面から容易に浮き上がってしまい作業が行いにくい.また軽量化のためには移動機構は簡単な物としたい.そこで本研究ではロボット本体にプロペラを取り付けて,作業時には正転させて押付けに使い,移動時には逆回転させることで2本のワイヤにぶら下がった状態で壁面より浮上し,その間に2本のワイヤ長をウィンチで調整して壁面を全方向に高速に自在に移動する方法を提案している.ロータは反作用による回転を抑制するためと,壁面に対する傾きを制御するために,回転方向の異なる二つのロータを機体の左右に配置する.一人で容易に運用できるようにφ300mm程度のロータを幾つか比較したところ,小型のラジコンヘリコプタのロータが高効率であることが判った.しかしこのロータは片方の回転方向のみに推力を効率よく出せるように特化した形状をしており,逆回転では正回転の50%程度の推力しか出ない.そのためロータ面そのものを反転させて浮上,押付両方に大きな推力が出せる方法が有効であると考えられる.ロータ面を反転させるには,ロータ,減速機,モータを含む機構部全体を反転させる方法も考えられるが,これは装置が大きくまた動作範囲も広くなり,結果として装置そのものが大きく重くなる.そこでロータ回転軸の中に収まる,回転翼のみを回転翼の長手方向の軸回りに回転させてロータ面を反転させる,小型で簡単な機構を開発し,正転反転で同じ推力を出すことを実験で確認した.また開発した反転ロータを二つ搭載した試作機を製作し,壁面にぶら下げた状態でロータを回転させ,安定した浮上と押付動作を行うことを確認した.
|