研究概要 |
本年度は手首関節ならびに肘関節の動作支援を目的に腕部装着型パワーアシスト装置を開発した.開発した装置は障害者の使用する姿勢保持用装具の構造を参考にプラスチックを成型した装着具および装着具の両端に配置した湾曲型空気圧ゴム人工筋から構成される.湾曲型空気圧ゴム人工筋は,ゴムチューブ,片側を軸方向に繊維強化したポリエステル繊維製蛇腹から構成されており,空気圧を供給することで湾曲動作を行う.支援対象部位の重量を考慮し人工筋の寸法を変えたことで,身体の姿勢保持以外に重量物の持ち上げなどにおいて人間の筋力を使用することなく動作を実現できることを筋電位の測定から確認した. つぎに,人間の意思に基づき装置を制御するため,対象部位の動作ならびに主動作筋の筋電位に基づく装置の制御手法の確立を行った.対象部位の動作に基づく制御手法では,人間と装着具を2個の力センサを介して接触させることで人間の動作によって変化する接触力に基づいて人工筋に供給する圧力を変化させる.この手法では人間の意志検出は力センサのみで可能であることから,簡便な装置で制御できる.つぎに主動作筋の筋電位に基づく手法では,まず力センサを用いてあらかじめ屈筋および伸筋の筋電積分と発生トルクの近似を行う.つぎに先の近似式から屈曲動作時の人間の発生トルクを求め,装置にトルク制御系を構築することで支援部位に対して負荷トルクを補償する.この手法では,装置の目標トルクは人間の発生トルクから決定するため,人間の動作に対してなめらかに追従できる.前者の手法では装置を簡便化ができる反面装置と人間のずれなどによる接触状態の変化の影響が大きく,後者の手法では,装置と人間の接触状態の変化によらないという長所がある反面,筋電位検出装置が必要なため装置が複雑化するという短所もある.そのため精度,使用頻度など目的に応じて両手法を使い分けることが有効であると言える.
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