研究概要 |
研究計画に基づき研究を行い,以下のような結果を得た. 1.装置の改良 伸び方向の実験を継続したために大きな装置の改変は行わなかった.しかし,潤滑剤の膜厚が数nmの領域では,振動ノイズの影響が無視できず,実験データの再現性が得られにくい等の問題があったので,振動ノイズを分析評価して振動源を特定するとともに,これに基づいて実験装置を再構成(高性能の除振台の導入,光学系の高剛性化)して,主要ノイズ源を除去するとともに,深夜実験により外乱を大幅に低減させた.さらに,液架橋が安定して得られるように,初期押し込み荷重,引き上げ速度を最適化し,Å単位で膜厚を同定することにより,実験の再現性を高めた.これらの改良や工夫により,単分子厚さのナノ液体高分子潤滑膜の伸び量と凝着力の測定を可能にした. 2.伸び方向への引き離し実験 潤滑剤として単分子膜厚さのPFPE系の直鎖状液体を使用して,触針と磁気ディスク表面の間に液体架橋を形成させたまま,触針を引き上げる実験を行い,膜厚をパラメータにして,分子鎖末端の極性基の有無(極性潤滑剤/無極性潤滑剤)の影響を比較した実験,および単分子層膜厚において,極性基の有無,分子量の大小を比較した実験を行い,伸び量と凝着力を測定して,分子量,極性基の有無,膜塗布後の時間経過,膜厚との関係を測定した. 3.実験から得られた結果 極性/無極性に関わらず,膜厚の増大とともに伸び量は増大すること,また極性潤滑剤では初期膜厚によらず時間の経過とともに伸び量が減少することなどを明らかにした.次に,無極性潤滑剤において,接触力は膜厚,分子量にかかわらず潤滑剤なしの場合と同等であることを確認した.最後に,極性潤滑剤において,接触力は2分子層膜厚までは潤滑剤なしの場合の半分程度と小さく,膜厚の増大とともに増加することを確認した.
|