研究概要 |
電圧スイッチング型D級インバータは零電流スイッチングにより数百kHzで90%台後半の効率を実現する。ハーフブリッジ状の2つのスイッチが半周期毎にオンオフを繰り返し,共振回路の一端を直流電源とアースに接続すると正弦波電圧が出力される。本研究ではスイッチの駆動にデルタ-シグマ(ΔΣ)変調を適用する。50Hzの正弦波入力信号に対し,200kHzのスイッチング周波数に合わせて量子化を行い,入力波形を2値(1bit)化する。得られた1/0のパルス列に従い駆動波形を間引きする。即ち「1」の周期は通常のスイッチング動作,「0」の周期は0Vを維持する。出力の正弦波振幅が増減し包絡線状に入力波形が出現する。零電流スイッチングは維持され,PWM方式よりもスイッチング損失が低減される。しかし出力波形はAM波形同様,時間軸対称の包絡線を形成するため一旦整流し,入力波形の半周期毎に反転させ,フィルタを通して交流とする。一連の動作を行う回路形態を提案し,Matlab Simulinkにて動作確認を行った。回路構成,基本原理とΔΣ変調器の帰還ゲインを変化させた場合の特性変化を,IEEE ISCAS 2005にて発表した。 この段階では出力波形尖頭部の平坦化とゼロクロスのジャンプが残り,総合歪率(THD)6%であったが,帰還ゲインの最適化と,共振回路の負荷Q値を変化させたシミュレーションの反復により,THD3%以下のパラメータ領域が判明した。この成果をIEEE ISCAS 2006に投稿し採択が決定している。回路実験による検証と合わせて2006年5月に発表予定である。平成18年度は,整流器の改良,負荷の誘導性/容量性への拡大,電流スイッチング型D級インバータの設計,試作を行う。
|