太陽エネルギーで駆動される熱電子発電器(Solar Thermionic Energy Converter:以後、Solar TEC)で高い変換効率を実現するには、太陽光の吸収率が高く放射損失の少ないエミッタが必要となる。平板状エミッタでは、照射する入射光のうちの20〜30%程度が吸収されるにすぎず、70〜80%は反射されるためエミッタを高温に加熱することは困難となる。本研究では、屋外での太陽光照射による発電実験を効率的に行うため、小型軽量なSolar TECを製作すると共にデータ集録および解析システムの構築を行った。まず、光トラップ機能を有するエミッタを光路解析に基づいて最適設計し、このエミッタを装備したSolar TECを製作した。製作したSolar TECは、モリブデン製エミッタ、ステンレス製コレクタおよびセシウムリザーバからなる。光トラップエミッタの底面とコレクタとの距離は、熱電子により形成される空間電荷効果を軽減するため0.5mmとした。太陽光はフレネルレンズにより集光され、エミッタ上面に設けたφ7mmの入射孔から内部に導入される。また発電実験に先立ち、製作したSolar TECの出力特性の数値解析を行った。計算結果によると、光トラップ機能が十分に機能した場合、約200Wの太陽光入力で、エミッタ部は約1500Kに加熱され、約5%の発電効率が得られる。なお真空容器中に設置されたエミッタ単体を用いた加熱実験では、105×70cm^2矩形フレネルレンズより1500Kまで加熱されることが確認されている。
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