研究概要 |
本年度においては,永久磁石同期電動機の新たなロバスト適応制御法の開発を行なった。特に電気自動車への応用を鑑み,新たなセンサレス制御法の検討を行なった。この結果,下記の成果を得た。 1. 近年多用されるようになってきた内部埋込磁石式の同期電動機(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)の新たな数式モデルを導出した。このモデルに基づけば,IPMSMの突極性を陽に考慮する必要がなく,いわゆる表面磁石同期電動機(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)と同様に扱うことが可能であることを明らかにした。 2.上記の事実に基づき,IPMSMセンサレス制御用適応オブザーバの構成法と設計法を提案した。すなわち,従来から提案されていたSPMSMセンサレス制御用適応オブザーバと同様な構成をとることができることを明らかにした。さらに,位置推定誤差を最小限に抑える設計問題がγ-正実化問題に帰着できることを示し,これに基づくオブザーバ設計法を提案した。これらの妥当性は解析および実機実験により示している。 3.電気自動車への応用を鑑み,10,000min-1を超える高速運転時において生ずる電流制御系の諸問題を明らかにした。この中で,低コスト化を目的に電流制御系にある種の制約が加えられると,若干でも位置推定誤差が生じると電流制御系が直ちに不安定化することを示した。この問題に対して,電流制御系にかかる制約条件の中でロバスト安定性を改善するために2自由度制御系に基づく新たな電流制御器を提案した。提案した制御器はP-PI制御器という極めて簡単な構成をとりながらも,上記の不安定化問題を解決可能な優れた制御器であるといえる。
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