本研究の目的 SAMsを界面に挟んだ金属・絶縁体・半導体(MIS)ダイオード構造の同一試料に対し静電容量とTFT特性の両方を測定し、界面準位と電気伝導特性との相関を明らかにすることによって上記問題点に対する回答を与えることである。 1.有機半導体-絶縁体-金属(MIS)ダイオードにおける界面の解析 有機MISダイオードの半導体としてp型で有名なペンタセンを真空蒸着法でSiO2および自己組織化単分子膜(SAMs)上に作製し、MISダイオードのCV測定および解析を行った。 (1)CV測定 SAMsで界面修飾したMISダイオードのCV特性を評価し、振る舞いに違いがあることを確認した。 (2)解析 (1)の結果を解析するため有機MISダイオードのにおける等価回路をMOSダイオードの場合のものから拡張し、解析方法を確立した。 (3)SAMsによる界面への変調の起源を調べるため、Si-MOSの単結晶でのトラップ解析で用いられる解析式を(2)の効果と組み合わせ、界面におけるトラップ状態を定量的に調べた。 その結果、SAMsの種類によって界面トラップの密度が異なることや、不純物半導体である有機半導体材料の特性が定量的に評価できた。 2.自己組織化単分子膜によって界面変調されたペンタセンTFTおける両極性特性 真空中でのTFT特性と大気中でのTFT特性をSAMsで界面修飾したデバイスについてTFT特性を評価した。P型TFTでも真空中およびSAMsで界面修飾されたものを用いるとソース、ドレイン電極がAuでも両極性特性が出現することが実験的に示された。起源については今後の課題であるが、比較的な簡便なプロセスのみで両極性特性を出現させられることは応用的には意味がある。また、このTFTを大気に曝すとn型特性は消滅し、真空中よりも優れたp型特性を示すことも明らかにした。これは、電子が大気の影響で打ち消され消滅したことを示唆する。 今後は、新型の測定方法で静電特性を精度良く測定できる非線形誘電率顕微鏡を用い、実験精度を上げ様々な材料について界面評価を行い有機半導体が寄与する界面の定量的な評価を行う。
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