本研究では、エピタキシャル成長により作製した歪み多層ヘテロ構造を微細加工して形成する、ナノチューブやナノコイルなど半導体機能性立体ナノ材料へ電極を形成する方法として電気化学プロセス法に着目し、半導体機能性立体ナノ材料の金属被覆による電極形成ならびに形成試料の電子物性の解明・制御、さらに将来的にはナノデバイス・ナノマシンといったナノ工学応用を目指している。本年度は、主として半導体機能性立体ナノ材料への金属被覆法に関する研究を行った。 (1)導電性を有する半導体立体ナノ材料用ウエハの作製 半導体立体ナノ材料の金属被覆を行うにはプロセス電流の制御が重要となる。このため本年度は、高い伝導性を有する半導体立体ナノ材料形成を目的とした、二次元電子ガスを有するヘテロ構造の作製を行った。作製した層構造は基板側から順に、GaAs(200nm)/AlAs(50nm)/InGaAs(20nm)/AlGaAs(10nm)/δ-doping/AlGaAs(5nm)/GaAs(20nm)/AlGaAs(5nm)/δ-doping/AlGaAs(15nm)/GaAs(5nm)である。 (2)半導体立体ナノ材料へのNi被覆膜形成 (1)で作製したウエハを用いて、微細加工によりAuGeNi電極から電気的に接続された半導体チューブ・コイルの形成を行った後、Ni^<2+>電解液を用いたNi被覆膜の形成を試みた。作製したウエハは高い導電性を有しているものの、当初はチューブ・コイル形成に至らなかった。原因は、50nmのAlAs犠牲層が10μm台の巻き径に比べて極めて薄く、乾燥工程で大きな表面張力が生じていたためであった。そこでチューブ・コイル形成からNi被覆膜形成に至るまでの工程を、乾燥工程を経ずに液中で行うプロセスを試みたところ、Ni被覆膜を半導体チューブ・コイルに形成できることがわかった。
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