本研究では、エピタキシャル成長により作製した歪み多層ヘテロ構造を微細加工して形成する、半導体機能性立体ナノ材料へ電極を形成する方法として電気化学プロセス法に着目し、半導体機能性立体ナノ材料の金属被覆による電極形成ならびに形成試料の電子物性の解明・制御、さらに将来的にはナノデバイス・ナノマシンといったナノ工学応用を目指している。本年度は主に以下の研究を行った。 (1)均一金属被覆法の探索 昨年度は定電圧やパルス電圧印加による試料作製を行ったが、金属被覆をより均一にするため、本年度はプロセス電流密度に着目した定電流およびパルス電流印加による試料作製を試みた。その結果、比較的低い電流密度では不均一になり、電流密度を高くするにつれて均一性が増すことがわかった。これは被覆初期過程で大きな過電圧が必要であることに起因すると思われる。ただし電流密度が高すぎる場合は膜が脆弱になり、膜剥がれ等の異常が引き起こされた。 (2)種々の金属被覆試料の作製法の確立 昨年度は二次元電子ガス内包構造へのNi被覆膜形成を行ったが、本年度はその他にCo、Cr、Pt、Auの被覆膜形成を試みた。被覆構造もナノプローブ応用を考慮し、曲げ形状をエッチングにより制御可能なInGaAsを2層対称に有する、GaAs(200nm)/AlAs(3000nm)n-GaAs(16nm)n-InGaAs(3nm)/n-AlGaAs(5nm)/n-GaAs(160nm)/n-InGaAs(3nm)n-GaAs(16nm)を新たに設計し、エピタキシャル成長および電気化学プロセスを行った。その結果、CoはNiと同様に被覆可能であり、またPtについても均一性は劣るものの被覆可能であることが示された。しかし、Crについては電流密度制御に問題があり現在のところ被覆が行えず、またAuについては無電解で被覆が進み現在制御不能である。
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