研究概要 |
本年度は,スピン注入素子として多種の金属材料成膜を可能とする8元スパッタリング装置の作製(現有装置の改良)と,これを用いたCoFeB系磁気トンネル接合の作製,スピン注入素子の試作を行なった.また,フェムト秒レーザーを用いた磁化ダイナミクス測定装置を作製した. (1)新規の8元スパッタリング装置によりTa(5nm)/MnIr(20nm)/CoFe(2nm)/CoFeB(2nm)/Al-O(1.6nm)/CoFeB(10nm)/Ta(5nm)という構成のトンネル接合を作製した.Al-O層はAl層を成膜後、酸素RFプラズマにより酸化し,投入電力,酸化時間を変化させ,トンネル磁気抵抗特性を測定することで最適化した.トンネル接合と同一構成の薄膜を作製し、AFMによる表面観察を行ない,成膜条件を調整することで,表面ラフネスが0.3nm以下で層間結合を示すループシフトが1 Oe程度の非常に平坦な薄膜が作製できることが分かった.磁性層に軟磁気特性にCoFeBを用いたため,CoFe系にくらべやや小さいが,23%程度の磁気抵抗変化率が再現性良く得られた. (2)Ta(5nm)/Cu(5nm)/CoFeB(1.5nm)/Cu(6nm)/CoFeB(10nm)/Ta(5nm)を作製し,電子ビーム露光,ECRプラズマを用いたArイオンエッチングによりスピン注入用微細加工素子を作製した.エッチング後層間絶縁膜を成膜し,レジスト剥離後100nm x 200nmの素子が作製できていることを確認した.この素子に上部電極を成膜し,磁気抵抗効果を測定し,MR値0.5%程度と,垂直方向に電流を流す場合のMR効果として十分な値を得た. (3)フェムト秒レーザーを用いた偏光解析装置を作製した.レーザー光は材料を励起するポンプ光と磁化方向を観測するプローブ光に分け,プローブ光に光学遅延を設け磁気ダイナミクスを測定した.ポンプ光によりガラス基板上に作製したGdFeCo合金膜を十分昇温可能であることが分かった.現在ポンプ光の周期が80MHzと高速であり,試料の励起後の冷却が不十分であるため,パルスピッカーによりポンプ光を間引く必要があることが分かった.
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