本研究は、現在日米欧を中心に開発研究の進められている次世代高温超伝導線材の交流電磁気特性が線材内部の微小欠陥にどのように影響されるのかを解明しようとするものである。平成17年度の研究成果は以下のとおりである。 1.既設の走査SQUID磁気顕微鏡を用いた直流自己磁界計測システムに、交流電流および交流磁界を印加するシステムと、それら外部交流信号と同期した出力信号を高感度に計測するシステムを追加し、交流電磁気特性評価のためのシステム構築を行った。得られたシステムの検証として、人工的に欠陥を導入した単結晶薄膜試料内を流れる交流電流の可視化を行い、(1)10K以下の極低温において、試料端を流れるマイスナー電流と量子化磁束のトラップによる周回電流の可視化、ならびに(2)臨界温度近傍で試料内全体を流れる交流電流の可視化を確認した。 2.前期の計測システムを用い、次世代高温超伝導線材内部を流れる電流の可視化を行った。その結果、同線材内部においては電流が不均一に流れていることが明らかとなった。これは、走査レーザ熱電顕微鏡等による結晶組織観察との対応より、線材内部に局在する欠陥に因るものと考えられる。さらに、印加電流を臨界電流値近傍で離散的に変化させ、電流分布の印加電流依存性を調べたところ、電流分布の形状そのものは、印加電流の強度に依存しないことが明らかとなった。このことは、任意の印加電流における電流分布を評価することが可能であることを示している。本成果と、低温走査レーザ顕微鏡により得られた磁束フロー損失分布の結果とを相補的に組み合わせることにより、超伝導体内部の局所的な電流-電圧特性を評価することが可能となる。
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