本研究は、現在日米欧を中心に開発研究の進められている次世代高温超伝導線材の交流電磁気特性が線材内部の微小欠陥にどのように影響されるのかを解明しようとするものである。平成18年度の研究成果は以下のとおりである。 昨年度構築した交流電磁気特性評価システムを用いて、次世代高温超伝導線材のひとつであるイットリウム系高温超伝導線材に交流電流を印加した際の電流分布の可視化を行った。その結果、交流電流通電時の電流分布が、直流電流を印加した際の定常電流分布と同様に、線材内部に局在する欠陥部分を迂回し、且つ欠陥近傍で集中する様子を、時間に対して連続的に観測することに成功した。さらに、フォトリソグラフ及びウェットエッチング技術を用いて、幅100マイクロメートル程度の細線を3本並列に配したマルチフィラメント型高温超伝導線材試料を作製し、同試料内部の交流電流分布の可視化を行った。その結果、全てのフィラメントが長手方向の両端にて超伝導結合している場合には、フィラメント間をまたぐ遮蔽電流のループが発生するため、あたかも一本の幅広いフィラメントであるかのように振る舞い、マルチフィラメントの外側から電流が侵入することが実験的に明らかとなった。また、定常状態において各フィラメントに流れる電流について調べたところ、インピーダンスの不均一に伴う不均一な電流分担となっていることが明らかとなった。これらの結果は、高温超伝導線材を用いた交流応用機器のための線材開発に対して貢献するものである。すなわち、本研究の成果は、交流損失低減のために現在検討されている、高温超伝導線材の細線化およびマルチフィラメント化に対する基礎的な知見を与えるものである。
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