室温大気中サンプルの磁場分布測定の高空間分解能化のために、高透磁率プローブを用いたSQUID磁気顕微鏡におけるプローブの最適化検討を行った。 SQUIDの検出磁場分解能は、プローブ先端部での局所的な磁束の集束率に支配される。これまでの等方性等磁率材料を用いたパーマロイプローブでは、プローブ先端のみならずシャフト部においても磁束を集束してしまう問題点があり、局所的に磁束を検出できず、検出磁場のラインスキャンデータにはバックグランド磁場が重畳され、検出磁場のダイナミックレンジを損ねていた。そこで本研究において、パーマロイプローブに非磁性材料を介してパーマロイをコーティングした磁気ガードを配置した新奇なプローブを提案して、有限要素法シミュレーションによりその磁束検出能力を調べた。その結果、局所的な磁場分布からのピークは低減させず、シャフト部における磁束検出をガードにより回避することで1桁程度のバックグランド磁場の低減が実現できる見通しを得た。サンプルの大きさとガード構造の最適化について現在引き続きシミュレーションを継続している。 また、シミュレーションにより明らかとなった磁気ガード構造のプローブを実現するための電解メッキ技術を構築した。プローブ先端部のみを露出して銅とパーマロイをシャフトにメッキすることに成功した。パーマロイのメッキには硫酸ニッケル6水和物と硫酸鉄7水和物の混合溶液をメッキ浴として条件出しを行った。元素組成分析を行った結果、パーマロイである組成比を得る再現性は十分に満たしていないため、引き続きメッキの条件調査を進める予定である。 さらに、真空下冷却のSQUIDヘッドとその制御回路および2次元の走査機構を導入し、磁気シールドを除くプローブの特性評価環境を構築した。 以上に係る研究成果については、オランダで開催された国際超伝導エレクトロニクス会議とオーストリアで開催された欧州応用超伝導会議(共に平成17年9月)にて発表した。
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