研究概要 |
平成17年度は,超格子の変調方式および変調超格子のバンド構造,波動関数の分布に関する検討を中心に以下の基礎的検討を行った. 1.層幅を変調した超格子は,ポテンシャル包絡を変調した超格子と同様に透過確率がほぼ1の通過域,ほぼ0の阻止域のほかに,離散的な鋭い共鳴準位からなる準通過域の3種類の帯域に分類されるバンド構造をもつことを明らかにした.また,回路理論における影像パラメータの利用により極めて容易に算出される無限周期超格子のバンド構造から,層幅を変調した超格子のバンド構造を直接計算することなしに推定する手法を提案した. 2.変調超格子に固有で特異な準通過域の形成メカニズムに関する検討を行った.変調超格子の通過域内および準通過域内の共鳴準位における波動関数の分布を比較した結果,通過域内共鳴準位における波動関数の分布は超格子全体に広がりをもつのに対し,準通過域内共鳴準位における分布は超格子の局所的な構造形状によって定まる固有なモードにしたがって分布していることがわかった.エネルギーフィルタ設計には準通過域の設計は非常に重要であるため,この検討結果は設計手法に有効に反映されることが見込まれる。 3.デルタポテンシャルを用いた変調超格子の特性調査を行い,従来の変調超格子と同様に平坦な通過域を形成することを確認した.したがって,デルタポテンシャル変調超格子も優れたエネルギーフィルタとして機能するものと期待される.
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