研究概要 |
平成18年度は,変調超格子の構造変調による特性改善メカニズム,半無限周期モデルによる通過域リップル推定,δ形ポテンシャルを用いた変調超格子に関する検討を行い,以下の知見を得た. 1.変調超格子の構造変調による特性改善メカニズムについて,共鳴状態における電子の波動関数分布から検討を行った.周期超格子についての波動関数分布との比較から,変調超格子は共鳴状態において構造全体が等価的に対称二重バリア構造を形成することがわかった.その等価バリアの幅がエネルギーの変化に対して連続的に変化するため,変調超格子は通過域で連続的な共鳴状態を維持し,透過特性が大幅に改善することがわかった. 2.周期超格子の新たな解析モデルとして,半無限周期モデルを提案した.本モデルによると,非常に少ない計算量で周期超格子の形成する通過域内リップルを正確に推定できることを確認した.本モデルにより,周期超格子に内在すると思われる変調超格子の準通過域に関する情報の抽出が見込まれるため,これを次年度の課題とした. 3.δ形ポテンシャルバリアにより表現された変調超格子は,通常の変調超格子よりも構造パラメータが一つ少ないため,特性とパラメータの依存関係の理解に非常に有効である.昨年度,δ形ポテンシャルを用いた変調超格子が通常の変調超格子と同様に平坦な通過域を形成することを確認したが,今年度は特性上の等価性の評価を行った.結果,特性上の等価性がほぼ保たれていることを確認した.一般にパラメータの削減は設計上有効であるため,δ形ポテンシャルの利用はエネルギーフィルタ設計に有効であると考えられる.
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