研究代表者らはこれまで、方位の異なるMgO単結晶を接合したバイクリスタル基板上にTri-Phase-Epitaxy法(TPE法)と呼ばれる単結晶薄膜成長技術によりNdBa_2Cu_3O_<7-y>(NBCO)薄膜を成長させることにより、基板の接合部に高品質な粒界接合の作製に成功してきた。しかし、従来は少ない試料による予備的な結果のみであった。本研究は、系統的な条件の高度化や特性評価を多数の試料を用いて行い、再現性の高い試料の作製技術を確立したうえで、詳細な特性評価を行うというものである。さらに、薄膜作製条件や加工条件との関連を調べることにより、粒界接合の物理的描像の解明を行うことも目的とした。 本研究では、検出器用のアンテナとして超広帯域性の平面型対数周期アンテナを採用した。平面型対数周期アンテナは基板に対し垂直指向性を有するため、準光学系との結合が良い。粒界接合とこのアンテナを組み合わせた広帯域ミリ波検出器を作製し、200GHz-340GHz帯のミリ・サブミリ後方波発振器(BWO)からの電磁波を照射して評価したところ、非常に明確なシャピロ・ステップが2THzに相当する電圧領域まで観察された。多数の試料を作製することにより、再現性よく製作することが可能となった。 さらに、いまだに未解明となっている強磁場中での粒界接合のマイクロ波に対する応答特性等を調べたところ、特定の方向の強磁場中で高周波応答特性が得られることが明らかとなり、高温超伝導体からの強磁場中でのジョセフソンプラズマ発生を直接検出する可能性が高まった。そのための独自の低温・磁場・高周波用プローブの試作も進み、マイクロ波に対する応答をはじめとする高温超伝導広帯域ミリ波検出器の低温物性を、微少電流観察装置を使用して系統的に評価する基盤技術も大きく進展した。
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