研究代表者らはこれまで、方位の異なるMgO単結晶を接合したバイクリスタル基板上にTri-Phase-Epitaxy法(TPE法)と呼ばれる単結晶薄膜成長技術によりNdBa_2Cu_3O_<7-y>(NBCO)薄膜を成長させることにより、基板の接合部に高品質な粒界接合の作製に成功してきた。従来は少ない試料による予備的な結果のみであったが、本研究により、系統的で再現性の高い試料の作製技術を確立及び詳細な特性評価を行うことが出来た。 本研究では、検出器用のアンテナとして準光学系との結合が優れた超広帯域性(45GHz-4.5THz)の平面型対数周期アンテナを採用した。粒界接合とこのアンテナを組み合わせた広帯域ミリ波検出器を作製し、数GHzから340GHz帯の発振器からの電磁波を照射して評価したところ、非常に明確なシャピロ・ステップが2THzに相当する電圧領域まで再現性よく観察された。さらに、強磁場中での粒界接合のマイクロ波に対する応答特性等を調べたところ、高品質NBCO薄膜からのジョセフソン磁束フローによる高周波発振を直接検出する可能性も見いだすという、予想外の新たな成果が得られた。このための独自のプローブを試作し、マイクロ波に対する応答をはじめとする高温超伝導広帯域ミリ波検出器の低温物性を、微少電流観察装置を使用して系統的に評価する基盤技術も大きく進展した。さらに、走査SQUID顕微鏡を用い、粒界接合における磁束量子の直接観察を行うことにより、接合部分での低磁場における磁束量子の挙動を明らかにした。
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