研究課題
近年のCPUやLSI等の電子デバイスの微細化に伴い、シリコンに代表される半導体材料の局所的な物性について、ナノスケールでの評価方法の確立が求められている。古くからこの種の物性評価に応える一般的方法としてラマン散乱が利用されており、一方で光の回折限界を上回る高分解能観察を実現するツールとして近接場光学顕微鏡が開発されてきた。本研究では、半導体ナノ材料観察を目標とし、不透明な半導体材料に適した開口型近接場光学顕微鏡に、ラマン分光を組み合わせた、近接場ラマン分光システムの構築を目指している。開口型近接場光学顕微鏡は、20〜100nmという開口サイズに対応した空間分解能を有するが、空間分解能を上げるために開口を小さくすると、それに応じて測定できる光強度が極端に弱くなる。そのため、特にラマン散乱光のように弱い信号光を測定するためには、測定系の高感度化が大きな課題となる。そこで、平成17年度は、開口型近接場光学顕微鏡の高感度化を目的として、光ホモダイン検出を導入して評価を行った。開口型光プローブでは、開口からの信号光以外に、開口周囲の金属膜からの強い反射光が存在する。この反射光は、これまでは信号光測定には邪魔な背景光として扱われてきた。しかし本研究では、この反射光のコヒーレンスの良さに着目して、これまで捨てていた反射光が逆に利用できることに着目し、反射光と信号光の光干渉を利用した光ホモダイン検出による高感度化を目指した。実際に行った実験では、これまでの方法では全く観察出来なかった非常にコントラストの小さい次世代光ディスクの高感度観察に成功した。今後、近接場ラマン分光システムへの導入が期待される。
すべて 2005
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Japanese Journal of Applied Physics Vol.44,No.9A
ページ: 6855-6858