研究概要 |
本研究は,酸化亜鉛(ZnO)と,スパッタ法により作製されるフォトニック結晶(Photonic Crystal : PhC)型光導波路とを組み合わせ,ZnOの非線形光学特性を利用した新規光機能素子を実現することを目的としている。平成17年度は,その第一段階として,ZnOスパッタ膜の結晶性向上と光導波路化,およびPhCを付与することによる擬似位相整合型の高効率第2高調波発生(SHG)素子の試作を行なった。 まず,スパッタ条件を最適化することによって,作製したZnO膜によるSHG効果が確認でき,結晶性の良好なZnO膜をコアとするスラブ型光導波路を形成できた。これに波長810nmのチタンサファイアパルスレーザ光を入射させたところ,出射光の波長を405nm付近に変換することができた。更に,このZnO導波路上にフォトレジストで構成される1次元PhC構造(周期〜1.08μm)を付与したところ,その効果により,約6%の波長変換効率の向上が確認できた。 また,別のアプローチとして,ポリマ(感光性ポリシラン)からなる導波路型光スイッチの試作も行なった。露光のみで基板面内方向のコア/クラッド構造を形成可能で,従来の石英系光スイッチに比べシンプルな工程で作製できる。マッハツェンダー干渉計(MZI)型を基本構造とし,Y分岐部分は,低損失なアンテナ結合型を採用した。MZI部分の一方のアーム上にTiヒータおよびAl電極を形成し,電流印加により加熱すると,ポリマの熱光学効果により屈折率が変化し,それに伴う位相変化によってスイッチングが可能となる。今回の試作では,光スイッチとしての基本動作を確認することができた。消費電力は6.8mWと非常に小さかった。このタイプの光導波路は,露光により屈折率の周期的な変調すなわちPhCを所望の領域に付加することも可能なことから,より高機能な光導波路デバイスの実現も期待できる。
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