研究概要 |
本研究は,スパッタ法により作製される酸化亜鉛(ZnO)薄膜とフォトニック結晶(Photonic Crystal : PhC)型光導波路とを組み合わせ,ZnOの非線形光学特性を利用した新規光機能素子を実現することを目的としている。平成18年度は,ZnOスパッタ膜の結晶性向上と光導波路化,およびPhCを付与することによる擬似位相整合型の高効率第二高調波発生(SHG)素子の試作を行なった。まず,スパッタ条件の最適化を進めることによって,作製したZnO膜によるSHG効果が確認でき,結晶性の良好なZnO膜をコアとするスラブ型光導波路を形成できた。これに波長810nmのパルスレーザ光を入射させたところ,出射光から波長405nm付近の成分が観測され,SHG効果により波長を1/2に変換することができた。更に,このZnO導波路上にフォトレジストで構成される1次元PhC構造(周期約1.08μm)を付与したところ,約28%の半波長成分の出力強度向上が確認できた。昨年度は6%程度の出力向上にとどまっていたことから,本研究は確実に進展していると言える。 また,光導波路技術の基礎的検討として,感光性ポリシランから鳴る導波路型光スイッチの試作も行なっている。紫外露光のみで基板面内方向のコア/クラッド構造を形成可能で,従来の石英系光スイッチに比ベシンプルな工程で作製できる。マッハツェンダー干渉計(MZI)型を基本構造とし,Y分岐部分は,低損失なアンテナ結合型を採用している。今回は,ビーム伝搬法(BPM)を用いたシミュレーションにより,昨年度に試作した光スイッチのレイアウトを基に,導波路の分岐部分,曲がり部分の構造の最適化を試みた。その結果,本光スイッチの全損失を0.2dB以下に抑えられる可能性が示された。従来の構造では,全損失の計算値は3.4dBであり,この設計で光スイッチを作製すれば,高性能化が期待できる。
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