量子細線・量子箱構造を活性層に導入する低次元量子井戸レーザは、高効率、狭線幅、低しきい値電流などの高性能化の点で非常に有望である。本研究ではこれらの低次元量子構造の特徴を際立たせるために、従来の半導体二重ヘテロ構造に比べ光閉じ込め係数が3倍程度大きい半導体/ポリマー複合導波路構造を用いた低次元量子構造半導体レーザを実現し、現状の歪量子井戸構造半導体レーザを凌駕する極限的低電力・高効率動作の可能性を実証すると共に、低次元量子構造の光学特性を明らかにすることを目的とする。本年度得られた結果は、 (1)レーザ活性層に生じる光利得を最大限に利用した高性能半導体レーザ実現のために厚さ約0.1μm程度の半導体薄膜を低屈折率の誘電体ベンゾシクロブテン(BCB)で挟み、活性層分離型DFB構造を付加した場合、通常素子と比較して3倍以上の光閉じ込め係数、1桁大きい屈折率結合係数を得ることができる。これまでに、光励起による室温連続励起により共振器長120μmの素子において、励起光強度0.64mWの低しきい値動作を確認した。また、副モード抑圧比は45dBとなり、良好な単一モード性を確認した。また、この半導体薄膜BH-DFBレーザを10μm間隔で並べることによって発振波長設定誤差0.8mm以内となることを確認した。 (2)ストライプ幅が広い(2μm程度)半導体薄膜BH-DFBレーザにおいては横モード単一化されておらず、モードホッピングなどの問題が生じていた。理論計算では横モードカットオフ条件はストライプ幅0.9μm以下であり、最低しきい値を取るストライプ幅も0.9μm近傍であった。そこでストライプ幅を0.4μmから2.0μmの7種類のレーザアレイを作製した。その結果0.8μm及び1.0μmの素子においてで単一軸モード発振が得られ、ストライプ幅1.6μmの素子において最低しきい値パワー0.85mWを記録した。 (3)更なる短共振器、低しきい値動作を目指し、DFBの屈折率差を大きくする構造を提案した。具体的にDFB部分の埋込再成長をすべて半導体で埋め込まず途中からSi0_2に切り替えることで高い屈折率差を得る構造を実現した。今回、半導体コア厚150nmに設計した元基板を用い、再成長部分の膜厚d_<gr>を変化させた3種類(d_<gr>=150nm、120nm、110nm)の素子を作製し、短共振器長の素子(L=80μm)からの室温連続発振を確認した。また、再成長膜厚を最も薄くした素子(d_<gr>=110nm)において、屈折率結合係数Kiは2900cm^<-1>が見積もられた(従来の3倍)。
|