研究課題
将来、人工的な触覚代行システムや人々の生活で利用されるロボットが実現されるためには、人間の中でも敏感な触覚を有する指先に匹敵する性能の触覚センサ開発が重要である。本研究では、シリコンが有する高密度集積化と知能化処理の特徴を活かし、対象の「接触形状」、「温度分布」、「接触冷温感」、「すべり」、「硬さ」等の静的・動的情報を含めた総合的触覚情報を検知可能な機能集積型触覚イメージセンサを実現することを目指している。本年度は、力覚の高感度化による信号広帯域化と最小分解能の向上、ならびに力覚・温度覚の同時検知が可能な熱・力覚集積化イメージセンサの実現に重点を置いて、研究を実施した。1.力覚の高感度化による信号広帯域化と最小分解能の向上本研究の目標である1kHzの信号帯域幅で0.3mNの分解能を実現するには、ダイヤフラムの周波数応答を高めると同時に、歪ゲージ感度を大幅に改善する必要がある。ダイヤフラムに高い空気圧を印加し、表面に張力を保つことにより、ダイヤフラムの共振周波数を約3kHz以上に向上させた。その結果、実測結果にて約2kHzの信号帯域幅を得ることができた。また、印加する空気圧を振動させ、微弱力の検出信号を周波数領域で雑音と分離した結果、目標とする0.3mN以下の最小分解能を実現することができた。これらの結果より、本触覚センサを用いた外力検出において、目標とする人間の指先以上の応答性が実現されたと考えられる。2.接触力と温度の瞬時分布を同時検知可能な熱・力覚集積化イメージセンサの実現温度検出素子を力覚と共に各画素内に一体化し、機能集積型触覚イメージセンサの第一段階を実現した。空間分解能向上のため、標準CMOSの範囲で最適な温度センサの熱分離構造を解析した。その結果、温度センサとしては、絶縁体上の多結晶シリコン薄膜を用いることが最適であった。力覚と温度の同時検知に必要な画素構造と周辺回路を設計し、一チップに集約して、「接触力分布」と「温度分布」を同時に得られる触覚イメージセンサを製作した。評価実験の結果、力覚と温度覚の2次元分布図を同時に取得することに成功し、それらより、画素ピッチである420μm程度の空間分解能が得られていることを確認した。以上の結果より、当該年度の研究目標は十分に達成できたものと考えられる。本年度に得られた成果はIEEE MEMS2006国際会議、ならびにTransducers'05国際会議において報告することができた。
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IEEE Transactions on Electron Devices in print
Japanese Journal of Applied Physics Part 2 Letter Vol.45, No.4
ページ: L108-L110
Proceedings of The 19th IEEE International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (IEEE MEMS2006)
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Sensors and Materials Vol.17, No.5
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Digest of Technical papers of the 13th International Conference on Sensors, Actuators, and Microsystems (Transducers'05) Vol.1
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