本年度は、次世代MRAMの書き込み方式への応用を目的として、強磁性秩序温度の異なるTb-FeおよびCoFe膜を交換結合させた強磁性二層膜について、その熱アシスト磁化反転特性を詳しく調べた。アモルファスTbFe膜は、比較的強磁性秩序温度の低い材料として知られており、磁気光学記録媒体の材料として利用されていたものである。実験の結果、TbFe/CoFe複合膜とCoFeフリー層からなる擬スピンバルブ膜をミクロンスケールに微細化した素子において、磁化反転特性を素子温度制御により人工的に変調できることが確認された。さらに、熱アシスト時における複合膜の磁化反転機構を明らかにするため、膜厚方向の磁気構造を数値計算により求めた。以下、本研究で得られた知見を箇条書きにまとめる。 ●アモルファスTbFe膜と低磁界スイッチングが可能かつMR特性の優れたCoFe膜を交換結合させた強磁性複合膜を有する擬スピンバルブ膜を作製し、スイッチング特性の温度依存性を実験、計算機シミュレーション双方の観点から詳しく調べた。 ●今回作製したTbFe(20nm)/CoFe(4nm)膜では、室温からTbFeの強磁性秩序温度(373K)までの温度上昇により、その保磁力を約55%低下させることに成功した。 ●計算機シミュレーションにより磁化反転時の膜厚方向の磁化分布を求めた結果、交換結合させたTbFe/CoFe膜の磁化は、温度上昇により交換結合が弱くなってもほぼ同時に反転することがわかった。 ●ミクロンスケールの矩形パターン化したTbFe/CoFe交換結合膜を有する擬スピンバルブ膜に対して、熱アシスト書き込みの動作実験を行った。
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