研究概要 |
InAs/AlSb系ヘテロ構造の特長を生かした高速なトランジスタ(HEMT)を開発するために、電子ビーム蒸着法やレーザ蒸着法によってAl_2O_3、HfO_2などの高誘電率酸化物材料(High-k)の薄膜成長を行い、ゲートリーケージが極小化できるデバイスプロセスの検討・最適化を行った。80nmのAl_2O_3ゲート絶縁膜を用いたInAs/AlSb系HEMTは良好なトランジスタ動作を示し、トランジスタ特性から見積もられる電界効果移動度は,0,1kV/cmの低電界領域においては16,300cm^2Vs,1.7kV/cmの高電界領域においても4,800cm^2/Vsの電子移動度を有することが判った。電子速度は高電界領域においても約1×10^7cm/sを保持していることが判り、その電界移動度と電子速度についてはパルスホール効果の実験結果とよく一致しており、high-kゲートを用いたトランジスタにおいてもInAs系ヘテロ構造の優位性が明らかになった。HfO_2薄膜を用いたトランジスタについても実験を行い、133mS/mmの相互コンダクタンスが得られた。今後、最適化を進める必要があるがリーク電流値はピコアンペアオーダーとゲートリーク電流の極小化に適した組み合わせであることを示唆している。 InAs系のバリスティックな電気伝導を利用した新しい整流素子の開発についても実験を進めた。今年度はより強い整流効果が期待できるWaveguide型構造についても加工を進め、従来型の素子構造と比較した。各温度でオーム則によらない非線形な電流一電圧特性が得られ、電流の方向に関わらず一方向の極性を持つ出力電圧の検出にInAs系で初めて成功した。特に、InAs/AlSb系材料特有の大きな平均自由工程が反映され、Waveguide型構造では室温で整流効果が観測された。InAs/AlSb系材料の高速電子デバイスへの有効性を明らかにした。
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