ミリ波の伝搬特性等を液晶の電気光学効果を利用して電気的に制御可能なデバイスの開発を目的として、サブ波長の周期構造を有する液晶セルの作製を試みた。液晶と紫外線硬化型高分子の混合系にフォトマスクを介して紫外線を照射することにより、液晶・高分子複合体に周期構造を作ることができる。液晶材料は、予定してた液晶が入手困難なため同じシアノビフェニル系ネマティック液晶のE-44を用いた。高分子材料はHX-620、NOA65、J-91の3種類の紫外硬化型樹脂を用い、格子周期が50μm、100μm、500μmのフォトマスクを使用して液晶セルを作製した。液晶セルの光学特性の測定を行うことにより、E-44とHX-620による液晶・高分子複合体の液晶セルにおいて、使用したフォトマスクと同じ周期を持つ回折格子が形成されていることが確認できた。液晶セルに外部電圧を印加することにより回折光の消失が観測されたことから、液晶・高分子層における屈折率分布の周期性が消失したものと推定できる。また、液晶セルの特性解析では、電磁界解析法として採用している有限差分時間領域(FDTD)法に、液晶分子の配向状態を考慮した有限差分法による液晶分子配向解析法を組み入れた電磁波伝搬シミュレーションを開発した。現在、シミュレーションの有効性を確認し、液晶デバイス構造解析への適用を行っている。ミリ波領域における測定については、今年度は90GHz帯ミリ波測定システムを構築するに留まった。次年度では、液晶・高分子複合体セル作製の最適条件の検証、液晶・高分子の周期性の電磁波伝搬シミュレーションによる解析およびミリ波帯における特性測定を行う。
|