本研究課題では、近年無線通信の活用によるさまざまな安全対策、情報提供システムが検討されているITS(高度交通情報システム)に注目し、信頼性を損なうことなく周波数を有効利用する方法として、路車間通信の路側に設置するアクセスポイントを複数連携させて動作させる通信システムの検討を行う。 平成17年度は、アクセスポイント間連携システムの検討を行った。ここでは、信号処理アルゴリズムの検討と、ユニキャスト通信、ブロードキャスト通信を同一周波数において同時に通信を行う際にアクセスポイントをどのように連携動作させるか検討を行った。信号処理アルゴリズムの検討としては平成16年度までに、一部先行する研究として複数のアクセスポイント間で時空間ブロック符号化(STBC)を施すことで、個別のアクセスポイントのアンテナ数を1、受信端末のアンテナ数を1とした場合でもダイバーシチ利得を得て、良好な特性を得る方法の検討を行い、既に学会での報告を行っている。ここまでの検討では、全部の端末に対してデータを配信するブロードキャスト通信のみをターゲットとするものであるが、平成17年度の研究ではこの研究をさらに発展させて個々の車両に対して送信を行うユニキャスト通信の場合の信号処理、さらにブロードキャスト通信、ユニキャスト通信を統合させるシステムの検討を行った。本研究ではブロードキャスト通信では前年度までの検討で行っていたSTBCを用い、ユニキャスト通信には同一周波数で複数のアクセスポイントの通信が可能なCDMA方式を高速化したMC/DS-CDMAを適用し、この際の拡散符号について新たな提案を行った。本提案拡散符号を利用することで、ユニキャスト通信が一対一の確実な通信を行いつつ、相互干渉無しに全ての端末宛のブロードキャスト通信が可能となった。この成果は広くITSなどの路車間通信に活用できるものである。
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