研究概要 |
本年度は本研究申請の基盤となった,一般アクセス構造に対する強いランプ型秘密分散法の存在定理に関する論文が採録となった.この研究は,一般アクセス構造に対して強い安全性をもつランプ型秘密分散法[山本,1985]が存在するための必要十分条件を明らかにしたものである.現在,公開鍵暗号などの分野では,ビット単位での安全性が議論されているが,本研究はこの議論と情報理論的安全性をもつ暗号システムを併用する時などに重要な知見を与えると考えている.また,本研究の副産物として,従来,非常に良く用いられるShamirの秘密分散法を用いて強いランプ型秘密分散法を実現するためには,パラメータ設定に注意する必要があることが分かった. さらに,視覚復号型秘密分散法の新たな展開として,復号時に画像の回転などを許した秘密分散法について研究し,可能な限りの一般化に成功した.得られた視覚復号型秘密分散法では,復号画像の画質は通常のものより劣るものの,隠すことの出来る秘密画像数が飛躍的に増大すると言うことが判明した.この意味で提案手法は暗号化の効率をよくしていると言うことができる.この成果は電子情報通信学会の英文誌に採録が決定し,来年度(5月)に掲載が予定されている. また,量子秘密分散法に関する基本的な知見(小川朋宏博士他との共同研究)も論文誌に掲載された.この研究は,量子通信路の「可逆性」と暗号の復号可能性を対応付けて論じることで,量子秘密分散法の符号化効率評価を,古典版の評価とほぼ同じ流れでシンプルに証明することに成功したものである.この評価によって,量子秘密分散法でも「ランプ型」が構成できる可能性が示唆された.しかし,その安全性評価にはまだ課題も残っている.
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