研究概要 |
前年度に提案された定在波同軸線路法は,測定試料を同軸線路先端の短絡材料として利用するため,整合終端の概念が不要である.これにより,電気接点の評価などに用いられていた電流ベース測定をマイクロ波帯PIM測定に導入することが初めて可能となった.この定在波同軸線路法について,本年度は主に(1)測定系の性能分析(2)電流密度の観点から見た素材のPIM特性分析(3)プリント基板材料など実用材料への応用,等の検討を行った. (1)システム性能分析 測定系内部で発生する残留ノイズは,測定感度を左右する重要要素のひとつである.これに対し定在波同軸線路の長さにより測定システムの残留ノイズ成分を最小化する手法を提案した.これは同軸線路の長さにより定在波の位置が移動することを利用したものである.これ以外に,試料の持つインダクタンスの影響や不要放射の影響について,近似計算や電磁界シミュレーションにより定量的に評価した. (2)電流密度の観点から見た導体材料の定量的PIM特性分析 導体材料の有するPIM特性を電流密度により一意に表現できることを初めて定量的に示した.本年度はFe、Ni、Cu、Agおよび真鍮等,ハンダ接続可能な導体細線を対象として検討を行い,基礎データを取得した. (3)導体表面状態とPIM特性 無鉛ハンダで表面がメッキされた細線を評価試料として採用した.その結果,「母材の種類がPIM特性に最も大きな影響を与えること」と「ハンダ添加剤(Ni、Bs、Ag、Cu、etc.)によるPIMの差異が,提案手法により識別可能であること」を明らかにした. (4)プリント基板材料など実用材料への応用 これまで困難だったプリント基板の構成素材毎のPIM特性評価を試みた.銅箔材料については,任意幅のストリップ導体で発生するPIM特性評価が可能であることを確認された.また誘電体材料については,容量負荷として定在波同軸線路法に導入する方法を提案し,基礎実験を実施した.
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