研究概要 |
平成17年度は,マイクロホンアレーを用いた移動話者追尾アルゴリズムの開発として,適応フィルタのアルゴリズムとして利用されている内点最小2乗アルゴリズムを話者追尾問題に適用できるように拡張して,その性能を検証した.提案法では,マイクロホンアレーの受信音を離散フーリエ変換を用いて周波数領域に展開し,各周波数において一般化サイドローブキャンセラを適用することにより,話者方向にピーク,雑音方向にヌルを形成する周波数領域一般化サイドロープキャンセラを用いた。その際,移動する話者方向にピークを適応的に向けるために,ブロッキングフィルタの遅延時間を時刻とともに調整する必要があるが,従来提案されていた手法では,特に音声の無音区間において数値的不安定性を生じ,結果として話者を追尾できず出力S/Nを低下させる原因となっていた。そこで,本研究では,数値的安定性を保証するために,遅延時間推定問題を制約付最小化問題として定式化した。この制約条件では,推定すべき遅延時間の範囲を制限するとともに,ブロッキングフィルタの出力パワーに対しても上限を設けることで,学習の発散を防ぐことが可能となる。この制約条件を満たす実行可能領域に対し,対数障壁関数を適用し,その最小解を遅延時間の推定値として用いることで,数値的に安定な解を得ることが可能となる。直線移動や正弦状移動に対し,本アルゴリズムを適用し,安定な解が得られることを確認した。
|