研究概要 |
これまでの研究において,カオス的パルス結合ネットワーク(CPCN)が呈する各種同期現象の解析を行うとともに,同期現象を利用した画像処理への応用例を提案している. 今年度の研究では,CPCNの構成要素であるカオス的スパイキング発振器(CSO)を高次元化した場合において(高次元CSO),同発振器が呈する分岐現象やパルス入力に対する応答特性の解析を行った.その結果,高次元CSOは従来のCSOでは見られないハイパーカオス,トーラス等の多彩な現象を呈することが確認された.本研究で提案しているCPCNを情報処理系の観点から捉えた場合,同期パターンの多様性が極めて重要となる.よって,新たに得られた知見に基づき,CPCNをより高機能な情報処理系へ発展させることが今後の課題となる. また,今年度の研究では,集積化に適したCSOの実装法についても検討を行っている.CSOは線形素子とスイッチ素子のみによって構成される簡素な回路モデルである.MOSトランジスタとキャパシタのみで構成されるCSOの回路モデルを設計し,P SPICEによる回路シミュレーションを行った.この実装法は,回路の小型化に適しているとともに,高速な動作も可能となる.今後は同実装法に基づいたCPCNを設計し,回路シミュレーション等を行っていく. 一方,近年のニューラルネットワーク(NN)の研究分野では,遺伝的アルゴリズム(GA)に基づくNNの学習法に関する研究が盛んである.そこで本研究では,同学習法を高速実行可能な専用プロセッサの開発を行った.GAやNNは基本的に並列演算が可能であるため,専用ハードウェア化することによって汎用コンピュータよりも高速に実行できる.本プロセッサをFPGAに実装し,その有効性を示した.今後は,本プロセッサをCPCNの学習に利用できるように改良を行っていく予定である.
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