本研究の目的はサイドチャネル攻撃に対して安全な無線通信における暗号プロトコルの開発であり、本年度は無線通信における通信帯域とは別の帯域における電磁波、いわゆる不要電磁波(雑音)にどの程度の情報が含まれるのかを測定することと、暗号プロトコルの理論的研究を行った。本年度の活動は以下のように分類される。 1)不要電磁波による情報漏洩の度合いの測定 2)ICカードなどにおける暗号プロトコル 1)不要電磁波による情報漏洩の度合いの測定 通信帯域以外の不要電磁波は回路に流れる電流に起因して発生するので、電流と不要電磁波の関係を調査することから着手した。回路構成が単純なZ80を利用したFPGAボードにDES暗号を実装したものを利用して測定実験を行った。しかしながらS/N比が非常に悪く有意な結果が得られなかったため、信号発生器を利用した実験に研究計画を変更した。本実験から、実験装置自体からの不要電磁波や使用している安定化電源装置の性能によって結果のぱらつきが生じることが明らかとなった。実験装置制御用のノートPCなど当初の計画と違う物品の購入の必要が生じた。 2)ICカードなどにおける暗号プロトコル 非接触ICカードで利用される暗号プロトコルは主にユーザ認証であると考えられるので、パスワードを使った認証プロトコルをベースに開発することを目標とした。本年度では、安全性が証明されているAddMA(EKE2)プロトコルを元に安全性を低下させないで小型実装可能な手法について理論的研究を行った。ICカードでは複数の暗号プリミティブの実装は不可能なことからハッシュ関数を利用した機能を共通鍵暗号によるMACに置き換えての実装について考察し、辞書攻撃に対して十分安全である認証プロトコルを提案した。本成果は2006年暗号と情報セキュリティシンポジウムにて発表を行った。
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