研究概要 |
本研究は不要電磁波を介して生じる情報漏洩を防止するプロトコルの開発であるが実験機材及び環境の問題に直面し,今年度は不要電磁波に含まれる情報量の定量的測定手法と不要電磁波から得られる情報量の上限に関する理論的展開と実験による検証に主眼を置いた。実験機材及び環境の問題とは,1)受信装置として市販機材を利用したため充分な帯域幅を設定できない。そのため結果が定性的になり再現性に乏しい。2)測定環境として電波暗室等を利用することが日程などの都合で折り合わず通常の実験室で測定を行った。そのため目的の電磁波を受信できているのか不明であり,1)と同様に定性的になり再現性に乏しい。3)RFIDをも用いた位置検索情報の漏洩実験に関しては,通信周波数帯の受信には成功するが不要電磁波の放射の観測が難しかった。これは前述の1)と2)の理由が複合的に原因となっている。 一方で,不要電磁波に含まれる情報量の定量的測定手法と不要電磁波から得られる情報量の上限に関する理論的展開に関しては大幅な進歩と成果が得られた。これは不要電磁波を生じている機器と受信者の間を連続通信路と見なし,その通信路容量から取得できる情報量の上限を見積もるものである。また,内部で処理されている情報が電磁波として放射されるメカニズムを非対称通信路と見なし,その通信路容量から電磁波として漏洩する情報量の上限を見積もった。これらから,平均化処理など信号処理の効果を見積もることができる。成果として国内論文誌1件,国際学会2件(いずれも査読付き)に採択された。
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