研究概要 |
本研究では,現代社会の複雑化にともない生起する生産情報の不完全性に柔軟に適応可能な生産システムの構成法として,強化学習を用いた自己組織的構成法を提案し,その構築を目的とする.具体的には,生産システムを,行動ルールを決定する内部構造として強化学習器を持った自律エージェントから構成されるマルチエージェントシステムとして構築する.自律エージェント間の役割分担の生成による協調的振る舞いの創発の結果として,不完全情報化においてしばしば発生するジレンマ的状況が解消可能となることが期待できる.具体的には,1.生産システムにおける情報と目的関数の観点からの理論的分析,2.強化学習を用いた自己組織化システムの構築,3.自己組織化過程の分析と,適用可能範囲の特定,実用化検討,という手順により研究を推進する. 本年度は,生産情報と生産の目的関数の観点から,生産システムにおけるジレンマ問題を分析し,手法の理論的有効性を検証し,強化学習を用いた生産システムの自己組織的構成法の基礎理論構築とシステムの構築を行った. 1.強化学習を用いた自己組織的構成法の理論的分析 生産における目的関数と生産情報の部分・全体性との関係から,生産システムにおけるジレンマ的状況の理論的分析を行い,提案手法である強化学習を用いた自己組織的構成法の有効性を理論的に検証した. 2.自己組織的構成法によるシステムの構築 製造フロアレベルの生産システムに,強化学習による自己組織的構成法を適用することにより,各要素が行動ルールを学習の結果として獲得し,役割分担を自己組織化するシステムの構築を行った.具体的には,作業者を強化学習エージェントとしてモデル化し,作業者間の役割分担を自己組織化する手法を開発した.また,製品投入器を強化学習エージェントとしてモデル化し,フロアの状況に応じた製品投入ルールを獲得する過程を観察し,提案手法の有効性の確認を行った.
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