研究概要 |
構造物の経年劣化の非破壊検査を目的とした磁気ヨークプローブについて検討を行った。プローブを用いて計測する磁気パラメータは被測定材料の磁気パラメータそのものではなく、磁気ヨークの特性も反映したものであり、被測定材料内では分布を持つ。本研究では、磁気特性の分布が明確になっている試料をプローブにより測定し、計測されたパラメータと被測定材料そのものの磁気パラメータ及びその特性分布との相関関係を定量的に明確にすることを目的とする。本年度はまず研究実施計画に従い、磁気ヨークプローブの作製及び試験片の準備を行った。さらに基礎実験として特性の異なる試料を2層、3層に重ね合わせた非常に簡単な分布をもつ場合について検討を行った。具体的には圧延率の異なる低合金鋼の試料板を準備し、1,2,3層各層の圧延率を変化させた場合について磁気ヨークプローブを用いて磁気測定を行い、各層が本来持つ磁気パラメータとの相関について検討した。ここで用いた磁気パラメータとしては保磁力である。その結果、磁気ヨークプローブにより計測された2層ないし3層の試料全体の保磁力は、各層が本来持つ保磁力の簡単な加算則で表すことが可能であることが明らかとなった。この成果は来年度の6月開催の国際ワークショップで発表予定である。また、本年度の結果を利用すると、大きさの異なるプローブを複数用意したうえでそれぞれのプローブについて加算則を算出し、その加算則に対して各層の保磁力を未知数として連立方程式として解くことにより、各層の磁気特性を分離できる可能性がある。来年度においては、実際に大きさの異なるプローブを複数準備し、実験的検討を行うことに加えて、被測定試料の劣化分布がより複雑な場合について検討を行う。
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