研究概要 |
本研究の目的は,交流磁場勾配を用いた局所静磁場発生装置を開発し,ピンポイント電子スピン共鳴計測法の確立を目指ことである。具体的には、既に開発された低渦電流空芯コイル型に対応した高速応答制御電源および魚卵対応の共振を開発し、実験装置の組み立てを行う。それに、制御プログラムの作成を進め、アルゴリズムの検討などを行い、基礎データを収集し、ピンポイントESR法の基盤技術を確立する。 今年度は,「高速磁場勾配制御用電源の製作」と「魚卵対応のL-バンドESR共振の開発」を行った。製作された磁場勾配制御用電源は、電流制御が可能で、応答周波数5kHz,最大電流値5Arms,最大電圧±50Vの性能を有しており、磁場勾配強度としては、0.1T/m以上を有している。また、z-軸のみの空間分解能を測定したところ、2mm(@0.2T/m),4mm(@0.1m/T)であった。2種類のラジカルを用いたモデル試料を同一共振器に入れ、ESRスペクトルを取得したところ、2種類のスペクトルを分離することに成功した。魚卵対応のESR共振は、直径10mm、軸長5mmの空間が感度領域であり、サクラマス魚卵の直径である4mm以上の感度領域を示していることより、魚卵への対応が可能である。 今年度の当初目的である実験装置の開発と立ち上げが完了し、次年度の制御ソフトウェアの開発のための基礎データの収集も完了した。次年度は、この結果を踏まえて、数秒程度の間隔で測定場所を任意に変更できる制御プログラムの作成と魚卵への応用を行う予定であり、現在、測定アルゴリズムの再検討とプログラムの仕様を作成している。
|