研究概要 |
ネットワークに接続した複数のカメラ間で共有する特徴として,色特徴に着目し研究を進めた.画像により取得される色情報は照明やカメラの色特性に依存して変化する.このため,複数のカメラ間で色情報を共有するためには,照明やカメラの色校正が必要になる.そこで今年度は,対象をIDタグで同定し,異なるカメラ間色情報を共有することにより,自動的にカメラと対象の色情報を校正する手法を開発し,シミュレーション実験によりその有効性を確認した. 自動的な色校正には最尤推定の枠組みを適用した.すなわち,画素値に加わる雑音をガウス分布で近似し,推定値と画素値との二乗誤差が最小となるようにカメラのスペクトル特性と対象の反射率特性,ならびに照明のスペクトル特性とを推定する.シミュレーションにおいては,色特性が未知の照明,対象,カメラにより画像を取得し,最小二乗誤差が最小となるようにそれぞれの色特性の値を推定した.ただし,最尤推定により得られる解には本質的な不定性が存在し,二乗誤差の最小値を与える解空間は,スペクトルの分割数と同じ次元を有する.そこで本研究においては,不定性を除去するために色特性が既知の対象を解空間の次数と同数だけ用意し,最尤推定値を校正した.校正に利用するために用意する色特性既知の対象を参照対象と呼ぶ. この際,最尤推定値が含む推定誤差の評価が重要になる.そこで,カメラと対象との間に存在する計測する-されるの関係を表す「計測グラフ」を導入し,参照対象とそれ以外の対象との間の距離を定義した上で,この距離が増大するにつれて推定誤差も増加することをシミュレーションにより明らかにした.
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