研究概要 |
近年RFIDタグが様々な物体にはられるようになり,タグの定位がロケーションアウェアインタフェース実現のキーとして注目されている.135kHz,13.56MHzのタグはループコイルにより電磁場を交信するため,磁気双極子の定位ができればよい.本年は,1)通常のように磁場の空間分布を計測するためにセンサアレイを用いることなく,磁場の空間勾配を計測することでコンパクトなセンサを用い,2)観測量から,反復演算なく直接磁気双極子位置を推定する高速なアルゴリズムを開発する,以上の2点を目的とした. まず,空間中の一点における磁場,および磁場の空間一階微分からなる勾配テンソルにより,磁気双極子位置を直接書き下す再構成公式を導出した.この式は双極子姿勢によらずに成立するものであるため,タグの向きによらない定位が可能となる.さらに勾配テンソルを計測するために,1)テンソルの独立な6成分を直接計測する手法,2)テンソルの主値(固有値),主方向(固有ベクトル)を計測する手法,の二つを開発した.1)の手法では,3対の平面型8の字コイルと,3対の軸方向8の字コイルを直交して組み合わせ,50mm角のセンサユニットを開発した.一方,2)の手法では,単一のループコイルを,双極子-センサ間距離に対して十分小さい距離を回転半径とする円周軌道上を走査させた.このとき,円周の法線をコイル法線と一致させておけば,得られる変調信号のフーリエ係数は,勾配テンソルの主値,主方向の全情報が含まれることを理論的に示し,また実験的に確認した.以上2つの手法において,80mmから150mm程度のレンジにおいて,5mm程度の精度で磁気双極子の定位が可能であることを実験で検証した.
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