研究概要 |
本年度は,昨年度に開発を行ったデュアル共振型超音波探触子を,実際の探傷に適用し有効性を評価することを目的とした。受信時および受信時の中心周波数が9MHz,14MHzのデュアル共振型超音波探触子を作製し,測定面と平行に存在する閉口き裂の探傷を試みた.深さ30mmの位置に長さ5mmの閉口き裂を有するスチール製の試験片を作製し,測定面上で探触子を1mm間隔で走査しながら超音波を閉口き裂に向けて送信し,き裂部分からの後方散乱波を受信した.そして,各測定位置において受信波の周波数解析を行い,二次高調波振幅(A_2)と基本波振幅(A_1)の比を計測した.また,送信子の印加電圧を79〜158V範囲で変化させ,そのときの超音波非線形性の応答についても調べた.その結果,閉口き裂の存在する測定位置では非線形性が顕著に大きくなり,閉口き裂の探傷が非線形性を測定することで可能になることがわかった.また,印加電圧を大きくすることで送信波の振幅を大きくすると,探触子による非線形性も同時に増大するが,非線形応答感度が向上することが確認された.更に,3点曲げ試験により閉口き裂部に引張応力を負荷してき裂をわずかに開口させたところ,開口が進むにつれて二次高調波成分が増え非線形効果が大きくなることを観察した.提案するデュアル共振型超音波探触子は,送受信で開口の大きさが同じであり指向性もほぼ等しいことがいえる.そのため,より精密でかつ安定した超音波非線形測定に有用であると考えられる.今後は,被検体の裏面に垂直に存在する閉口き裂に対し,斜角法で同じくデュアル共振型超音波探触子の有効性を評価する計画である.
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