研究概要 |
本研究では,申請者がこれまでに開発してきた光音響顕微鏡システムに表面プラズモンによって励起する熱波を組み合わせた光音響顕微鏡システムの改良型ともいえる新規な熱波顕微鏡システムを開発することを目的とする。プリズムに取り付けられる特殊な光音響セルを作成し,高感度マイクロホンで厚み50.2nmの銀の光音響信号を測定した。従来より20倍程度、光音響信号振幅を増大できることが明らかとなったが、特殊な形状の光音響セルが必要であり、より簡単で高感度な信号測定法を検討する必要が生じた。そこで、材料表面の温度変化による光の偏向を利用する光熱偏向法を取り入れ、ポジションセンサーによるレーザプローブの偏向を検出する方法を検討した。その結果、現在のレーザパワー(9mW程度)では、高感度マイクロホンの方が信号を検出しやすいことが明らかとなり、今後さらなる検討が必要である。さらに、金や銀などの金属薄膜だけではなく、近年、注目されている透明電極の熱物性の評価ができないかを検討した。まずは、透明膜の熱拡散率推定方法を理論的に検討し、透明膜の熱波インピーダンスと基板の熱波インピーダンスとのミスマッチングによる測定誤差、透明膜の熱拡散率を正確に推定するための熱拡散距離との関係などについて明らかにした。すなわち透明膜の熱拡散長を透明膜の厚みの1.2倍以上になるようなレーザ光の変調周波数を使うことでより精度のよい測定ができる。また、透明膜の熱拡散率を推定する場合、光音響信号振幅よりもその位相情報を使う方が正確に推定できることも明らかにした。
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