研究概要 |
本研究では,「制御システムにおいて,所望する制御仕様を満たすには,通信にどの程度帯域が必要であるか?」という問題を出発点とし,研究対象を大規模制御システムに広げ,帯域制限を考慮した制御系の解析・設計手法の確立を目指す. 今年度は主に,共有ネットワークを介した遠隔制御系に対する,通信量制約のモデルを考慮した制御器の設計問題を考えた.制御対象側にある複数のセンサやアクチュエータは,個別に遠隔にある制御器と通信を行うが,その際に通信量制約により周期的な通信方式を用いることとした.さらに,通信路上のパケットは確率的に損失すると仮定した.主な結果として,次の3点が挙げられる. (1)遠隔制御系が属するクラスの系,すなわち周期的でランダムに切替わるシステム行列を有する確率系に対するH∞ノルムの必要十分条件の導出. (2)遠隔制御問題におけるH∞最適な設計手法の確立. (3)安定化に必要な通信量の限界を最大パケット損失確率として導出. 以上から,制御対象の不安定な度合いと通信量の間のトレードオフが明らかとなった.主に理論的研究を進めたが,有効性の検証はシミュレーション実験を通じて行なった. また上の結果を周波数分割の手法に基づく制御系設計問題へ適用し,その有効性が確認された.他方,これまで研究を行ってきた量子化信号を用いた制御系の性能解析,また適応制御やシステム同定についても,新たに発展させることができた. 今年度は以上の結果の一部を,第5回計測制御学会制御部門大会(5月,仙台),American Control Conference(6月,Portland, OR, USA),第5回制御理論シンポジウム(10月,大阪)などで発表した.
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