研究概要 |
制御入力を制御対象に加えるにあたり,実装上の理由から本来の入力信号ではなくパルス幅変調された信号を入力することがしばしばある.本研究ではそれを一般化して,制御入力が以下の条件を満たさなければならない制御系をPWM制御系とよぶ:(1)0または1の2値しかとれない(2)各サンプル区間で最初は1をとる(3)各サンプル区間で1回だけ1から0に切り替えることができる.本年度はこのPWM制御系に対して,共同研究者であるU.Jonsson(スウェーデン王立工科大)およびC.-Y.Kao(メルボルン大学)両氏との議論に基づき,軌道のロバスト制御問題を定式化し,軌道周りでの線形化に基づく設計法を導出した.具体的には2つの成果を得た.まず初期状態からの終端軌道への収束を偏差のL2ノルムの意味で最適化するLQ制御問題を定式化し,線形化により線形離散時間LQ制御問題に帰着することを示した.この結果はAutomatica誌への採録が決定されている.次に昨年度の成果である外乱から終端軌道との偏差へのL2誘導ノルムを最適化するH∞制御問題を拡張し,H∞性能に加えてサンプル点間応答を含めた応答の平均値が目標値を追従するサンプル値H∞サーボ問題を定式化し,線形化により線形離散時間H∞サーボ問題に帰着することを示した.この結果はIEEEの決定と制御に関する会議(CDC)で結果を公表した.いずれの結果もU.JonssonおよびC.-Y.Kaoによる従来結果である厳密な安定性解析手法により,高い性能および(ロバスト)安定性を有することが確認されており,ヨーロッパにおけるDC-DC変換器に関するプロジェクトHYCONの会議でも高く評価された.
|