研究概要 |
本年度は,MPUMベースド補間問題に基づく実現問題を制御系(またはシステム)設計問題として定式化を行い,消散システム設計理論を構築するために必要かつ本質的な理論的性質を明らかにすることを目的に以下のことがらを行なった. (1).消散システム理論のある一つの重要な性質として,一様消散という概念を提案した.これはエネルギーが必ず消散するようなシステムの性質であり,特異制御問題などでその性質が重要になる.ここでは,システムが一様消散であるための等価条件を導出した. (2).消散性と関連の深いスペクトル分解について,上で述べた一様消散の場合に消散率を誘導するスペクトル分解のアルゴリズムを与えた.これは具体的には,ユニモジュラな多項式行列のスペクトル分解に相当しており,その簡潔なアルゴリズムを与えたことは,多項式システム理論においても,有用な成果を挙げたといえる. (3).消散システムの設計問題の一つの応用として変数推定問題を取り扱い,設計手法と実現方法を提案した.そして著者が消散システム設計のために提案した差分型二次形式に基づく消散性理論の妥当性を得ることができた. (4).これらの基礎的な話題およびこれまで得られた結果などを用いて,補間問題に基づくMPUMベースドなシステム設計問題について,あるスカラーのクラスであるが定式化を行い,基本解を導出した.ここで得られた結果は「高木の補間問題」と呼ばれる古典的な解析学の問題の一つに帰着されたが,ここでは,まったく新たな側面からその問題の等価条件をあたえたと言う意味で,数学的にも興味深い成果を挙げたといえる.
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