研究概要 |
自動車のワイパーのびびり振動、メトロノームの時の刻み、旋盤におけるバイト・材料間の振動、心臓のペースメーカ細胞など、非線形システムの自励振動は我々の身の回りのいたるところに存在する。複数の非線形システムを結合したシステムに生じる複雑な現象の解析は、極めて重要な基盤研究の1つである。これらの振動子が拡散的に結合された場合、結合信号に遅延時間やダイナミクスが混入すると、それらの振動が停止してしまうかもしれない。最近、2個の2次元自励振動子を遅延素子で結合すると、両振動子の振動が停止する現象(Time Delay Induced Amplitude Death)が発見され、注目を集めている。 研究代表者は、平成15,16年度若手(B)により、上記の振動停止現象が発生しない十分条件(奇数条件)の導出ならびに結合にダイナミクスが含まれても同様の現象が生じることを理論的に示している。この停止現象は、振動子の挙動を利用する立場から見ると、好ましいものではない。 本研究では、この先行研究で得られた結果(奇数条件)に基づき、振動停止現象を回避する方法について考察した。その結果、離散時間振動子に対する制御器の構成ならびに設計手順を提案した。結合に遅延が含まれる場合、安定性解析は困難になるが、システム制御理論における遅延時間系の安定論に関する知見を活かし、制御器の系統的な設計を提案することができた。これらの理論的な成果を、コンピュータシミュレーションによる数値実験で検証し、有用であることを実証した。これら一連の研究成果を、国際会議(NOLTA'06)で発表した。
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