研究概要 |
本研究の目的は,映写機がコマ送りで発する音響信号を分析し,その機械固有の音響成分を抽出することによってピッチを自動検出するアルゴリズムの開発および,そのアルゴリズムによって副音声を同期再生するシステムの開発を行うことである。既存システムでは,映写機のコマ送りを行う装置の凹凸をセンサによって検出してコマ数に換算し,映写機の再生ピッチを取得していたが,検出装置の取り付けが映写機によって異なり,検出した凹凸を時間に換算するための同期化アダプタなど,専用のハードウェアが必要であるという問題があった。そこで,映写機から1コマ送るごとに発生する「カタカタ・・」という機械音を分析し,映写機の再生ピッチを取得するアルゴリズムの開発を行った。 映画館常設の映写機,ポータブル映写機など,様々な映写機の音響分析を行った結果,映写機によっては,約1/24秒ごとに発生するコマ送りによる機械音以外に,電源のモータ音と思われる60Hzの非常に大きな音が発生する場合があり,単純にはピッチを抽出することができないことがわかった。しかし,コマ送りによって発生する音が発生した直後には,その音色に相当する映写機固有の周波数成分が2kHz〜10kHzに存在することがわかり,この部分を特徴成分として基準波形を生成することとした。 このような特徴成分を用いて基準波形を生成し,複数の映写機から得た音響信号に対してピッチ抽出を行ったところ,正しくピッチ抽出が行えることを確認した。 以上の成果を2006年3月に開催された電子情報通信学会2006年総合大会において発表した。
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