近年、コンクリート中の鉄筋を腐食させる、水分、酸素、塩化物イオンなどの外部因子の浸透防止、あるいは浸透抑制といった観点から、コンクリート表面を保護するための種々の材料が開発されている。これらは、大きく分けてコンクリート表面を被覆する(表面被覆)タイプと、表層部に含浸させる(表面改質)タイプの2種類に分類されるが、その原料成分は様々な種類のものが存在し使用されている。また、これらコンクリートの表面被覆材および表面改質材は、主にコンクリートの物質透過性に着目し研究・開発されてきたこともあり、凍結融解作用を受けるコンクリート構造物に適用する場合、材料自身の耐久性も含め、その劣化メカニズムについては解明されているとはいい難い。そこで本研究は、表面被覆材および表面改質材を用いたコンクリートの凍害劣化メカニズムについて明らかにするとともに、その耐久性評価手法を提案することを目的としたものである。本年度は、表面保護コンクリートの凍害劣化メカニズム、特に表面含浸材を用いたコンクリートのスケーリング抵抗性について実験的に検討した。なお、実験に使用した表面含浸材は、珪酸アルカリを主成分とする水溶液と酸化珪素系の水溶液の2種類を含浸させる含浸材A、珪酸質系水溶液にポリマーディスパージョンを混合した含浸材B、シリコン系シラン化合物を用いた含浸材Cの3タイプである。得られた結果の概要を以下に述べる。 1.含浸処理を行ったコンクリートは、無処理のものと比べて何れのケースにおいてもスケーリングが抑制される傾向にある。また、凍結融解開始直後から含浸材の種類による効果の違いが明瞭に確認された。その効果は、含浸材A>含浸材C>含浸材Bの順に大きく、特に含浸材Aを用いた水セメント比55%のコンクリートは、空気量が3%であっても発生したスケーリング量は極めて少ないことが分かった。 2.コンクリート表層部5mmより採取したモルタル片より細孔径分布の測定を行った。その結果、含浸材Aおよび含浸材Bを用いたコンクリートの総細孔容積は、約35mm^3/gであり、無処理のコンクリートと比べて、3割程度低下する傾向にあることを確認した。 3.コンクリート表面(含浸面)から深さ方向におけるヴィッカース硬さの測定結果より、含浸材Aを用いたコンクリートは、表層部の密実性の改善効果に加えて、表層強度を大きく改善する傾向にあることが分かった。なお、水セメント比60%のコンクリートにおいて、表層強度の改善効果は含浸面から深さ方向において6mm程度であることが確認された。
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