研究概要 |
平成18年度における研究実績の概要を以下に示す. 1.腐食鋼板の強度解析法および板厚測定間隔に関する解析的検討 撤去されたプレートガーダーウェブの板厚データを用いて,腐食した周辺単純支持板のせん断強度解析を多数実施し,精度良く腐食鋼板の保有強度を推定するための解析法について検討した.さらに,実際の現場で急務の課題となっている「どれくらいの間隔で板厚を測ればいいのか」といった問題について,平成18年度(せん断)と平成17年度(圧縮)の研究成果の両方から言及し,少数ではあるが具体的な腐食形態を挙げて,最適な板厚測定間隔について強度解析の観点から検証した. 2.鋼構造物にみられる腐食状況の調査と腐食傾向の整理・分析 高知県は,地形的・気候的特徴から鋼構造物の腐食被害が懸念されている.そこで,高知県中部地方の鋼橋について腐食現況調査を行い,腐食原因・腐食箇所・腐食形態に焦点を絞って整理することで,腐食傾向を把握した.高知県における腐食被害(特に局所腐食)の実態が浮き彫りとなったが,腐食被害の3割程度は,維持管理作業により大幅に軽減できるとの見通しを得た. 3.腐食鋼材の降伏強度評価に関する解析的検討 引張を受ける腐食鋼材内部の応力状態や変形といった力学的挙動については未解明な部分が多く,これらを把握することは,腐食部材の補修・補強を考えたときに重要な情報となる.そこで,過去に引張試験を行った腐食試験片の詳細な凹凸データを用いた引張強度解析を実施し,実験結果と比較することにより強度解析法や既往の強度評価法を検証したとともに,鋼材が降伏に至るまでのメカニズムについて,いくつかの新しい知見を得た. 4.腐食鋼材の収集および板厚計測による腐食データの蓄積 腐食したトラス橋より撤去したガセットプレート数枚を入手する機会を得た.今後は表面の塗装や錆を除去した後,板厚測定を実施する予定である.
|