研究課題
地下水揚水に起因する広域地盤沈下は日本のみならず世界の低平地で起こっている災害である。さらにこの地盤変動は不可逆であり、一度地下水位を低下させると、もとの地盤には戻らないことが知られている。近年では構成式の高度化が進み、地盤の骨格構造の記述が可能になっている。代表的なものは名古屋大学地盤力学研究室が開発したSYSカムクレイモデル(回転硬化上・下負荷面修正カムクレイモデル)であり、土骨格構造(構造・過圧密・異方性)の変化を記述している。すなわち、高位な構造にみられる限界状態線より下側での塑性圧縮を伴う軟化、さらに、過圧密粘土にみられる限界状態線より上側での塑性膨張を伴う硬化挙動などをシミュレートできている。加えて数値計算の高精度化が進み、これら構成式研究と水〜土連成有限変形解析とあわせて、長期圧密沈下挙動のシミュレーションが可能となっている。本研究は、このモデルを用いて、地下水位低下に起因する骨格構造の劣化を考慮した地盤沈下の計算を行った。本年度は季節変動などによる地下水位変動が地盤に及ぼす影響について検討した。地下水位履歴を受けた地盤が地下水位規制などによって地下水位が回復したとしても、季節変動などによって地下水位が繰返し変動するような場合は、骨格構造の劣化を引き起こし、地下水位履歴のない地盤に比べて沈下が継続して起こる可能性があることを示した。この傾向は、骨格構造が発達した自然堆積粘土地盤に多く見られる。2年間の研究を通して、自然堆積地盤に、地下水位を低下させ地盤を乱してしまうと新たな荷重(上載荷重や地下水位変動)に対して脆弱になっていることを示した。今後はさらに事例解析などに取り組む予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
土木学会年次学術講演会 (CD-ROM)
ページ: 3-271
PLASTICITY 2006, Halifax, Canada.
第41回地盤工学研究発表会 (CD-ROM)
ページ: D-07