研究概要 |
本研究は、干潟の豊かな生態系の維持及び再生に資することを念頭に置いて、干潟土砂環境動態の体系的な予測モデルを開発することを目的としている。具体的には、潮汐/波浪等の動的環境外力や熱照射/降雨浸透等の微気象条件を受けて変動する干潟土砂環境動態に対して、観測・実験・モデリング/シミュレーションによる三位一体化した取り組みにより、その実現を目指す。 本年度に得られた成果の要点は次のようである。 1)干潟土砂環境場の岸沖動態観測:自然干潟地盤内のサクションを核とした土砂物理環境の連動過程を捉えることに世界で初めて成功した。特に、干出時のサクション深さ勾配に基づく表層への水分供給,地表からの温度蒸発,土中塩分集積過程が連動した干潟土砂の保水機構を明らかにした。 2)水面変動制御下の干潟模型実験:水位/地下水位変動を制御した干潟模型実験により、従来の波・流れによる土砂移動形態とは異なる、サクション動態による地表変動の発達プロセスを新たに見出した。さらに、繰返し潮位変動にともなうサクションの動態が岸沖干潟地盤表層における緩密ひいては硬軟の顕著な発達を引き起こすことを明らかにした。 3)干潟地盤環境の動態モデリング/シミュレーション:間隙水移動の質量保存と土骨格弾塑性変形の連成式に基づく干潟土砂のサクション動態、地下水面変動、地盤密度構造ならびに地形標高変化を整合的に記述しうる理論モデルを開発した。さらに、本モデルによる予測結果を上述の模型実験結果を突き合わせることにより、潮位変動に起因した干潟地盤表層の堆積構造の成り立ちを定量的に説明できることを示した。 今後は、上述の取り組みをさらに発展させるとともに干潟土砂環境動態が底生生物の活動形態に及ぼす影響の解明を行っていく予定である。
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